◆ウラベニキアゲハ(?)現る

今年2回目の長野県遠征時8月14日のこと。その日は山登り、沢登り、にわか雨の中の撮影と目まぐるしく変る状況の中を精力的に活動していたため疲労を感じ始めた午後3時のことであった。最後のひとふんばりとオナガシジミを求めて川沿いに生えるオニグルミの樹を丹念に見回っていたところ、はるか向こうの畑にキアゲハが舞っているのを見つけた。うん?何か変だぞ!そう、普通のキアゲハに比べていやに赤っぽいのだ。これはもしや噂に聞く迷蝶か!と思いが浮かんだ瞬間、パブロフの犬のごとく条件反射で網を片手に脱兎のごとく駆け出したのであった。水路を飛び越え、休耕田に突入し、生い茂る雑草をかき分け近づいてみると、赤いのは翅裏であることが判った。B級ホラー映画の一場面に出てくるような「血糊べっとり」といった感じなのだ。表は普通のキアゲハ、裏は鮮血が飛び散ったような赤、これこそ迷蝶に違いない!さしずめウラベニキアゲハといったところか。(コラコラ勝手に名前をつけるなよ!とひとりつっこみを入れる)慎重にネットイン。見たままの蝶が網の中でバタついているのであった。よくよく見ても何これ??同行のK氏曰く「キアゲハですよ。裏が赤いのはユリで吸蜜したときに花粉がついたんですよ。よくあることです」、私「うーん・・・」迷蝶採集の淡い期待が無残に砕けた瞬間であった。キアゲハは表も裏も黄色という固定観念に凝り固まった私の頭では想像だにしなかった結末であった。豚もおだてりゃ木にも登るし、場所が変れば蝶も化粧をすることを思い知った盛夏の出来事であった。


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