◆三川山のゼフィルス

三川山南側斜面のブナの若い樹で構成される森、 新葉が広がった。 [2003年5月1日撮影]

2000年総括

 今年は積雪が多く、また春先4月前半の気温が低かったため、ゼフの出現時期は全般的に例年より3日から5日程度遅れた。まず現れたのは例年通りフジミドリシジミ♂、ウラクロシジミ♂であった。フジミドリ♂は6月12日頃から現れたもようであり多数発生した。ヒサマツミドリシジミ、エゾミドリシジミ、ジョウザンミドリシジミ、アイノミドリシジミ、メスアカミドリシジミの各♂は6月18日頃から現れた。メスアカミドリを除き、発生数はいずれも多く、特にヒサマツミドリは隔年の当り・はずれの大当たりの年であった。♂の発生のピークは6月25日前後であった。山の標高や地形や時間帯によってテリトリーを張る♂も多数見られた。ヒサマツミドリ、アイノミドリの♀も今年は例年になく多く採集されたようである。フジミドリを除き各♂は7月に入っても数多く見られたがボロ・スレばかりとなった。7月の中頃になると♂は数を減らし、見かけるのは♀が多くなった。私自身3年ぶりにウラキンシジミを確認したが、それとは逆に例年確認していたウスイロオナガシジミを今年は見なかった。

 現在、妙見・蘇武林道の北進工事が進められ三川山北を巻く計画であるとの情報を得た。もしこれが事実なら近い将来大きな環境の変化が予想され、ヒサマツをはじめとする一部のゼフの生息の大打撃となると思われる。心が痛む。本件についての情報のある方は提供を願いたし!

三川山のゼフィルスのご紹介

位置・植層

 但馬地方の中央部に位置し、標高は888M。香住、村岡、日高、竹野の4町に境し、豊富な植物相、動物相を呈した興味深い山です。下部の渓谷沿いには、サワグルミ、トチノキ、タニウツギなどが見られ、標高400M前後から、ブナ、ヒメコマツ、ミズナラなどの大木が現れ、山頂にかけて、ヒノキを交えてブナ林がよく発達しています。

アクセス

 神鍋一番奥の集落の稲葉からNTT保守道路にて山頂に至るルートが一般的です。山頂まで約5KM、一応車道ですが、入り口から600M上ったところにゲートがあり、基本的に車はここまでです。あとはひたすら山道を登るのみです。

確認したゼフ

 私がここで実際に確認したゼフは12種です。

アカシジミ 山麓から山腹まで、数はそれほど多くない
ウラキンシジミ 山腹で1頭のみ採集実績(2000年さらに1頭確認)
ミズイロオナガシジミ 山麓から山頂まで、たくさんいます
ウスイロオナガシジミ 山麓および山腹、ここではナラガシワではなくミズナラを食樹にしています
オナガシジミ 山麓のクルミ林にいます
ウラクロシジミ 山麓から山頂まで、非常にたくさんいます
ヒサマツミドリシジミ オスは山頂でテリ張り、メスは少ない
メスアカミドリシジミ 山麓の渓谷にいます 数はそれほど多くない
アイノミドリシジミ 山腹から山頂にかけて多数、 朝日に耀き乱れ飛ぶ姿は圧巻
ジョウザンミドリシジミ 山麓および山腹 当り年にはムチャクチャいます
エゾミドリシジミ 山腹にたくさんいます
フジミドリシジミ 山頂付近 数は多いがとにかく採集困難です

 12種以外にも、ミドリシジミ、オオミドリシジミ、ウラミスジシジミ、ウラゴマダラシジミ、ハヤシミドリシジミ、の5種類は近傍の山で確認しています。

フジミドリシジミ

 三川山を代表するゼフです。とにかく、数は多いのですが、高い、止まらない、飛ぶコースが予測しにくい、卍になりにくい、で見かける数に較べて採集できる数が非常に少ないです。100回見かけても1頭も捕れないこともあるとご理解ください。オスは活発に飛び回るせいか、きれいな翅表の期間はせいぜい1、2日のようです。オスの出現期間も10日間ほどなので、週一回休みの普通のサラリーマンの方の採集のチャンスは年一回でしょう。小雨や曇天でも、けっこう飛び回ります。オス、メス同時に羽化するようです。いろいろな本に“野外採集のメスは交尾済み”との記述がありますが、ことフジミドリのメスに関しては、当てはまりません。過去2回とも翅表のきれいなメスは未交尾でした。雪が多い年は残雪の上を飛ぶこともあります。

ヒサマツミドリシジミ

 三川山のもうひとつの代表がヒサマツです。当り年と外れ年を一年ごとに繰り返しています。無風快晴の日、オスは陽が傾く1時頃からボチボチ、テリトリーを張りはじめます。午後3時から4時がピークとなります。一般的に低木にテリを張る種のようですが、こと三川山に関しては、テリ張り位置が高いです。

 過去7年間では、’98年6月20日過ぎの頃が最高でした。視界のなかにいつも飛び回り、そこかしこに卍飛翔を繰り返し、たまに地表近くまで卍が降りてくることもありました。それに引き換え’99年シーズンは最低でした。飛ぶ姿も非常に少なく、おまけに電話線沿いの枝がことごとく切り払われ、さらにテリ張り位置が高くなってしまいました。

 山頂でメスを見かけることはたいへん難しいです。あれほどオスがいるのに、なぜメスがいないのか、もっと調べてみないと解りません。現地での同好者の聞き取りでは、メスは年に数頭しか採れてないようです。


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