◆執念の挑戦!ベニモンカラスシジミ

 図鑑でしか見たことのない蝶を初めて実際に見た時は誰でも、心ときめくものがあるものです。まして、俗にいう珍種と呼ばれるものをついにGETとした時は“天にも上る”気持ちになります。昨シーズンではベニモンカラスがそれでした。

 まず、どこで見られるのか?自宅から近く、最も確率の高いところはどこか?やはり岡山県の○○岩しかありません。満を持して、5月29日朝3時、遠足当日の子供のように飛び起き、自分で作った梅おにぎり3個を持って、女房、子供に感ずかれないように、静かに静かに出発したのでありました。

 友人からもらった地図を頼りに、神社横の駐車場に到着したのが、6時。当然一番のりです。まずはポイントの確認を、と朝露に濡れた小道を降りていきます。ついに現れた○○岩、聞きしに勝る断崖絶壁。こんなとこから下に落ちたら一巻の終わりです。この日の二人目がやってきたのが8時。地元のハイレベルな同好者で、ベニモンに限らず、いろいろ教えていただき感謝です。彼曰く「今日は無風快晴のベニモン日和、10頭ぐらいはかたいね。」おー、力強いお言葉。はやる気持ちを抑え、ベニモン開演時間の9時を待ちました。

 8時を過ぎると、ひとが来るわ、来るわ、あっという間に6、7人。でもネットを振る場所が3人分しかありません。来た順で、替わりばんこで、採ろうと、紳士協定成立です。

 ところが、ところがです。9時を過ぎ、10時が来て、11時になっても、お目当ての主役が一向に登場いたしません。まあ、午後にはなんとかなるか、と甘い期待を抱きつつ、自作のおにぎりにかぶりつきました。1時を迎え、2時を過ぎ、いつもの閉演時間の3時になっても、とうとう現れませんでした。最後までねばったのは私を含めて4人です。お目当ては現れずとも、はじめて出会ったその日に、濃厚な時間を共有したため、友情が一気に開花し、深まってしまいました。でも、たいへん疲れたのも事実でした。

 週が変わり、仕事をしていても、どうも頭からはなれません。週末が近づくと、もう一回チャレンジしてみよう、という気がムクムク沸き起こってきます。先週のメンバーに連絡をとると、翌々日もヌル、ただし1頭目撃、とのこと。もう行くしかない!

 6月5日、今日も快晴です。今日は友人O氏と2人で、まずは別のポイントへ直行。友人O氏はここでめでたくGET。私はヌル!今日もダメかなー、と弱気のムシが頭をもたげます。友人O氏をなんとか説得して、いざ行かん、○○岩へ。さてさて、行ってみると、先週メンバー2人、その他5,6人が、例によって狭いところにひしめいています。本日の捕獲頭数2頭。その1頭づつを先週メンバーがGETしていました。東京から来ている方もいて、ヌルのご様子、いらついているのがよく判り、近よりがたい雰囲気です。ネットを振る場所もないので、やむなくブッシュをかきわけ、谷を降りることにしました。ちょっと開けた空間に、ムラサキシジミをひとまわり小さくした黒っぽいシジミがチョロチョロ飛んでいます。すぐ止まり、またすぐ飛び立つ感じは、コツバメとキマルリをたして2で割ったようのものです。そっと近づくと、おおー!ベニモンカラスじゃ!と思った瞬間飛び立ち、な、なんとこちらに向かって飛んでくるではありませんか。こともあろうか、頭上1Mの葉の上に止まったのです。葉の裏からシルエットが見えます。ドキドキ、心臓の鼓動が早くなっていきます。失敗は許されない!いちかばちか、えい、とばかりネットを振りました。やったー!入ったー!感動の瞬間です。

 結局、メスのスレでした。でもでも、たいへんうれしかったです。このポイントで、5月から6月にかけての2週間で、のべ50人以上が来ていたと思われますが、実際に採れたのは、たぶんひとけたの数でしょう。採りにこられる方へひとこと、甘い期待は禁物ですよ。


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